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夕陽

 夕日が目に染みてしょうがない。
 本拠地から見えるのは、海に落ちていく燃えるような夕日。天頂に望む太陽よりもそれはとてもまぶしくて、僕は目をしかめた。
 手で影を作り、目を細め、遠くを見る。夕日はまだ夜の出番を許さずに、何者をも真っ赤に染めている。照らしているのはいつも同じ日だけれど、毎日同じ夕日はないから。なぜかそんな言葉が頭をよぎる。
 かざしていた手をじっと見て、そして僕はぎゅっと握った。皮の手袋がひきつれた。
 僕は手袋を取る。手袋の下はまだ、包帯が巻いてあって素肌には程遠い。手袋は取ってもめったに僕は包帯ははずさなかった。その下に何があるかは、皆知っているはず。でもどうにもはずせなった。
 グレミオを、テッドを父さんをオデッサさんを。またさまざまな魂を喰らってきた紋章。ソールイーター。僕はおそるおそる包帯をほどき、赤い光にそれをかざした。
「おい、ウィル。こんなとこにいたのか。飯だぞ」
 僕はびくりとして、手のひらをぎゅっと握りそれを隠した。包帯が落ちた。呼びかけた声は味方の声。なにをそんなにびっくりすることがあろうか。
「ビクトール」
 大柄な男が立っている。
「どうした、そんな真っ青な顔して」
「そんなに、青い?」
「まー、いつもよりはな。食ってんのか。そんな細い腕して」
「さすがにビクトールよりは食べてないよ」
「言うな」
 軽口を叩きあい、どっしりとした歩き方で、ビクトールが僕の傍らにやってくる。どうやらもう空は夜風を含んできたようだ。ビクトールの髪が微かにゆれている。肌寒い。
 ビクトールの影が僕のとこまでやってきている。それなのに、僕らは押し黙ってしまっている。目に付き刺さるようだった赤い光も、もう弱々しく僕らの身体を照らすだけだ。落ちた包帯を拾いながら僕は問うた。
「ねぇ、ビクトール」
「なんだ」
「頼みがあるんだけど」
「できることはそれなりにな」
「そんなに難しいことじゃないよ」
 手袋と包帯をポケットに押し込める。
「もし、この戦争に負けたら」
  ビクトールの顔色が変わる。
「僕が捕らえられたら」
 険しくなる。
「手首を切り落として逃げてほしい。無理なら殺してくれてもいい」
 眉がぎっと歪められる。
「ソールイーターは、ウインディには渡したくないんだ。だから」
「やだよ」
 耳をほじりながら、目はあさってのほうを向いている。
「俺ぁやだね。逃げることを、生き残ることを考えろよ。生きてりゃ挽回のチャンスもあるな。死んでりゃなんもできねぇ」
 僕はきっと泣き笑いの顔をしているだろう。ビクトールは僕の頭を小突いて、ぐしゃぐしゃにして、背をたたいて笑った。
 落ちてしまった夕日を背に、僕らは中へ入る。僕は風飛ばされるような小さな声で「ありがとう」とだけ言った。

 うちの坊ちゃんはウィルといいます。

 なんだかよくわからなくなってしまいましたが、幻水2をやってって、グランマイヤーさんが縛り首にあったとき考えてた話の発展版になるはずだったのだが、どうして! てな。
 2主と坊ちゃんでこういう話書きたいけどなあ。上手く行かないなあ。